実は「結婚の挨拶」と「両家の顔合わせ」は、同じ場面を指す言葉ではありません。結婚の挨拶はふたりが相手の親に承諾をもらいに行く場で、顔合わせはその後に両家がそろって初めて対面する食事会です。順番を取り違えると、招く側と招かれる側が入れ替わってしまいます。

顔合わせで戸惑いやすいのが挨拶の扱いです。挨拶の出番は始まりと結びの二か所にあり、それぞれ話す人も長さも変わります。何も決めずに当日を迎えると、誰が口火を切るのかで沈黙が生まれます。

この記事では、結婚の挨拶から両家の顔合わせまでの流れを整理したうえで、場面ごとにそのまま口に出せる挨拶の例文をまとめます。

この記事で分かること

  • 結婚の挨拶と両家の顔合わせが別の場である理由
  • 顔合わせ食事会の当日の流れと挨拶が入る位置
  • 始まりから結びまで場面別に使える挨拶の例文
  • 顔合わせの席で避けたい忌み言葉と話題の選び方

結婚の挨拶と両家の顔合わせの違い

顔合わせの準備でつまずく原因の多くは、結婚の挨拶との区別があいまいなまま日程を決めてしまう点にあります。二つの場は目的も参加者も違います。まずは全体の順番と、顔合わせという場の輪郭から押さえます。

顔合わせ食事会の流れを六段階で示した図

親への結婚の挨拶を先に済ませる

結婚が決まったときに最初に動くのは、両家の顔合わせではなくそれぞれの親への挨拶です。ふたりで相手の実家を訪ね、結婚の意思を伝えて承諾をもらいます。両家が合意して初めて、顔合わせの日程を組む段階に進みます

訪問の順番は、女性の親を先にするのが一般的です。女性が相手の家に嫁ぐという受け止め方が長く残っているためで、先に女性側へ筋を通す形が定着しています。婿養子として迎えられる場合は逆になり、男性の親から訪ねます。

この順番は形式の問題に見えて、実際の心証を左右します。片方の親が「話を聞いたのは後だった」と感じると、顔合わせの席まで空気を持ち越すことがあります。先に訪ねた側の親へ、もう一方の挨拶が済んだことも伝えておくと、両家の持つ情報がそろいます。

どちらの親から訪ねるか迷ったときは、結婚の挨拶の順番は何が正解?両家のマナーを解説!で判断の材料を確認してください。

項目 結婚の挨拶 両家の顔合わせ
目的 親から結婚の承諾をもらう 両家が対面して親睦を深める
参加者 ふたりと片方の親 ふたりと両家の家族
場所 相手の実家が中心 ホテルや料亭などの個室
時期 結婚が決まった直後 挨拶から一、二か月後

表のとおり、結婚の挨拶は承諾をもらう場、顔合わせは両家が打ち解ける場です。目的が違うため、述べる挨拶の中身も自然に変わります。

顔合わせを開く時期と場所の選び方

両家がそろう食事会は、双方の親への挨拶が済んでから一、二か月以内に開くのが一般的です。結婚式の日取りや会場を決める前に済ませておくと、その後の相談を両家そろって進められます。

場所は、ホテルのレストランや料亭など個室を用意できる店が選ばれます。周囲の話し声が届かない空間のほうが、家族の名前や仕事の話を落ち着いて交わせるためです。座敷か椅子席かは、年配の家族の膝の具合まで含めて決めます。

両家が離れて暮らしている場合は、中間地点で開くか、遠方から移動する側の負担が軽くなる形で調整します。移動時間の長い家族がいるなら、開始を昼過ぎに寄せると当日の往復に無理が出ません。

服装は両家で格をそろえるのが要点です。片方がスーツ、もう片方が普段着では、写真を撮ったときにも差が目立ちます。ふたりで「スーツとワンピースで」と決めて、それぞれの親へ先に伝えておくと安心です。装いの基準は結婚の挨拶で男性の服装は何が正解?マナーを解説!が参考になります。

店を予約するときは、顔合わせの食事会である旨を伝えておきます。席次や進行に配慮してもらえるほか、婚約記念品を披露する時間も取りやすくなります。

顔合わせ当日の流れと所要時間

顔合わせ食事会には決まった型があります。始まりの挨拶、家族紹介、婚約記念品のお披露目、乾杯、歓談、結びの挨拶という並びで進むのが基本の形です(ゼクシィ 顔合わせ食事会の挨拶&口上 文例集)。

所要時間は2時間半から3時間が目安とされています。前半の1時間ほどで紹介と記念品のお披露目を終え、残りを歓談に充てる配分が多く見られます。料理をコース仕立てにすると、進行が皿の運びに乗るため時間が読みやすくなります。

婚約指輪や時計などの記念品を交換する場合は、乾杯の前に時間を取ります。箱から出して見せる場面は写真に残りやすく、両家が同じ話題で盛り上がれる数少ない山場です。記念品がなければ、この工程は省いて構いません。

歓談に入ってからは、ふたりが会話の橋渡しを担います。親同士が直接話す時間をつくることが顔合わせの本来の目的です。料理の説明や写真の話を挟みながら、双方の親へ均等に話が向くよう気を配ります。

流れは事前に紙一枚にまとめて共有しておくと、当日の迷いが消えます。手作りのしおりに進行と両家のプロフィールを載せておけば、それ自体が会話のきっかけになります。

挨拶を担当するのは誰なのか

進行役は、ふたりのうちどちらかが務めるのが一般的です。顔合わせはふたりが親を招くという考え方で開かれるため、招く側が場を回す形になります。親が主催する場合は、親のどちらかが進行を担います。

挨拶も進行役がそのまま担当することが多く、新郎か新郎の父親が始まりと結びを述べる形がよく見られます。ただし決まりではありません。新婦側が場所を用意したなら新婦の父親が述べるなど、両家のバランスで決めます。

大切なのは、誰が話すかを当日まで空欄にしないことです。始まりの挨拶で全員が顔を見合わせる時間が生まれると、そこから空気が硬くなります。前日までに担当を伝え、話す内容の骨子まで共有しておきます(マイナビウエディング 両家顔合わせの挨拶例文集)。

場面 話す人の目安 盛り込む内容
始まりの挨拶 新郎または新郎の父親 集まったお礼と会の趣旨
家族紹介 新郎新婦がそれぞれ 名前と続柄と人柄の一言
乾杯の発声 進行役または父親 短い一言と乾杯の合図
結びの挨拶 新郎または新郎の父親 お礼とこれからの決意

父親が人前で話すのを苦手にしている家庭では、無理に頼まずふたりで引き受けます。担い手を形式で決めるより、場が滑らかに進む配置を優先します。

費用の相場と支払いの決め方

顔合わせの費用は、会場と料理の格で幅が出ます。ゼクシィの調査では平均9万8600円、結婚スタイルマガジンのトレンド調査2025では平均9.2万円という数字が示されており、全体の7割ほどが10万円以内に収まっているとされています。

支払いは、ふたりが負担する形が最も多く選ばれます。親を招く会という位置付けに沿うためです。両家で折半する、双方の親が出すという形もあり、どれが正解と決まっているわけではありません。

問題になるのは、当日その場で決めようとした場合です。会計の前で譲り合いが始まると、せっかくの空気が値段の話に流れます。誰がどう払うのかは予約の段階で両家に伝えておくのが安全です。

食事代のほかに、会場までの交通費や宿泊費、手土産の代金もかかります。遠方から来る家族の交通費を招く側が持つかどうかも、あらかじめ決めておく項目です。持参する品の選び方は結婚前の挨拶の手土産は何を選ぶ?相場とマナーを解説!で扱っています。

支払いを滑らかに済ませたいなら、事前に決済を終えておく方法もあります。店に相談すれば、当日は席を立つだけで会計が済む形にできる場合があります。

顔合わせの前に両家で決めておく項目

  • 開く日取りと店の場所
  • 始まりと結びの挨拶を誰が述べるか
  • 婚約記念品のお披露目をするかどうか
  • 服装の格をどこにそろえるか
  • 費用を誰がどう負担するか

両家の顔合わせで使う結婚の挨拶例文

ここからは、場面ごとにそのまま口に出せる挨拶の例文を並べます。どれも1分以内で述べ切れる長さです。名前と関係だけ差し替えれば、当日の言葉として使えます。

挨拶の場面と担当者を対応させた一覧図

始まりの挨拶と乾杯の例文

始まりの挨拶は、集まってもらったお礼とこの会を開いた理由を伝えるだけで足ります。承諾のお願いや結婚式の相談は別の場の話で、ここでは両家が打ち解けるきっかけをつくることに絞ります

本人が進行役を務める場合の例文です。

本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。私と◯◯さんの結婚にあたり、両家に親しくなっていただきたいと思い、この席を設けました。堅苦しい会ではありませんので、どうぞ気楽にお過ごしください。

続けて乾杯の発声に移ります。乾杯は短いほど収まりがよく、長い前置きは食事の始まりを遅らせるだけです。

それでは僭越ながら、乾杯の音頭をとらせていただきます。両家のご健勝とご多幸を祈りまして、乾杯。

始まりの挨拶に入れる四つの要素

  • 集まってもらったことへのお礼
  • この会を開いた理由
  • 気楽に過ごしてほしいという一言
  • 進行を担う人の名乗り

緊張して言葉が飛ぶのが心配なら、しおりの内側に要素だけ書き込んでおきます。文章を丸ごと読み上げるより、四つの柱を見ながら自分の言葉で話すほうが表情がやわらぎます。

家族紹介で添える一言の例文

家族紹介は、新郎側から始めて新婦側へ渡すのが基本の順です。本人が自分と家族を紹介し、続けて相手側が同じ形で紹介します。名前と続柄だけで終わらせず、人柄が伝わる一言を添えると、そのあとの歓談が動き出します。

紹介する側の例文です。

あらためまして、◯◯です。まず私の父の△△と、母の□□を紹介します。父は釣りが趣味で、休みのたびに港へ出かけています。母は庭の手入れが好きで、家の前を花でいっぱいにしています。そして妹の◇◇です。看護師として市内の病院に勤めています。

一言に選ぶのは、趣味や好きな食べ物、出身地といった相手が質問を返しやすい話題です。役職や学歴を並べると、家柄を比べる空気が生まれてしまいます。

祖父母が同席する場合は、続柄を先に述べてから名前を伝えます。耳の遠い家族がいるなら、少しゆっくり、名前をはっきり区切って話します。

紹介される側の家族も、名前を呼ばれたら軽く会釈を返します。全員が黙って座ったままだと、紹介する側だけが話し続ける形になり、場が一方通行になります。

結びの挨拶の例文

結びの挨拶は、集まってもらったお礼と、これから家庭を築いていく決意を短くまとめます。時間が押している場面でも、この二つが入っていれば形は整います。

本日は私たちのためにお集まりいただき、ありがとうございました。おかげさまで、両家がゆっくりお話しできる時間になりました。まだ未熟なふたりですが、温かい家庭を築いてまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

「最後に」という言い出しは避けます。終わりを連想させる言葉として、慶事の席では控えるのが通例です。「結びに」「締めくくりに」と言い換えるだけで印象が変わります。

結婚式の日取りや新居がすでに決まっているなら、ここで一言添えると、両家が同じ情報を持って解散できます。決まっていない項目まで無理に触れる必要はありません。

述べ終えたら、深く一礼して締めます。立ち上がるか座ったままかは、店の造りに合わせます。個室の座敷なら座ったまま、椅子席なら立って述べる形が多く見られます。

親が結びを担当する場合でも、本人がひとことお礼を添えると収まりがよくなります。挨拶の主役を親に譲りつつ、招いた側としての立場を最後に示す形です。

父親が挨拶する場合の例文

父親が挨拶を担当する家庭も多くあります。ふたりが述べる場合との違いは、両家の親同士が直接言葉を交わす形になる点です。子どもを送り出す側としての一言が加わります。

始まりの挨拶を父親が述べる場合の例文です。

本日はお忙しいなか、遠方よりお越しいただきありがとうございます。◯◯の父の△△でございます。このたびは、ふたりの結婚をお認めいただき、感謝しております。堅苦しい会ではございませんので、どうぞお料理とお話をお楽しみください。

結びを父親が述べる場合は、両家の関係をこれからどうしていきたいかを短く添えます。

本日はお集まりいただき、ありがとうございました。おかげさまで和やかな時間を過ごすことができました。これからは両家で力を合わせ、ふたりを支えてまいりたいと存じます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

父親が話し慣れていない場合は、話す長さを1分以内と決めておきます。用意した文章を読み上げても失礼にはあたりません。言葉のうまさより、両家へ向けた気持ちが伝わるかどうかが見られる場面です。

母親が挨拶に立つ形も増えています。父親が担当する家と母親が担当する家が並んでも、失礼にはあたりません。両家で担当を伝え合っておけば、当日の並びに違和感は残りません。

忌み言葉と話題の選び方

顔合わせは慶事の席のため、避けたほうがよい言葉があります。忌み言葉と呼ばれるもので、別れる、離れる、切れる、割れる、冷える、終わるといった、縁が切れる情景に結び付く言葉が該当します。「最後に」も終わりを示すため、挨拶の切り出しには使いません。

顔合わせの挨拶で避ける言葉と言い換え

  • 「最後に」は「結びに」へ
  • 「終わります」は「締めくくります」へ
  • 「切れる」「割れる」は口にせず別の表現へ
  • 「ますます」「たびたび」は重ね言葉のため使わない

重ね言葉も控えます。ますます、たびたび、だんだんといった同じ音を繰り返す言葉は、結婚が重なる情景に結び付くとして慶事では避けられてきました。「いっそう」「あらためて」に置き換えれば意味は通ります。

避けたい言葉と言い換えを並べた比較図

話題選びも同じくらい効きます。会話が続きやすいのは、天気や季節の話、ふたりの子どもの頃の話、出身地の食べ物、趣味、そして結婚式や新居の相談です。とくに子どもの頃の話は双方の親が語りやすく、共通点も見つかりやすい話題とされています(結婚スタイルマガジン 顔合わせ食事会の話題)。

反対に、その場にいない人の愚痴や悪口、政治と宗教、病気や不幸なできごとの話は避けます。価値観の割れる話題は初対面の席で持ち出さないのが安全です。専門的すぎる仕事の話も、聞く側が相づちに困ります。

会話が続く話題と避けたい話題の比較カード

相手の反応が薄いと感じたら、話題を切り替えます。ふたりが橋渡し役として両家の話が偏らないよう向きを変えていくと、沈黙の時間が生まれません。携帯電話は音を切ってしまっておきます。

両家の顔合わせによくある質問

顔合わせの挨拶では、細かい部分で手が止まりがちです。質問の集まりやすい点をまとめます。

挨拶はどのくらいの長さが適切か

始まりも結びも1分以内が目安です。原稿にすると300字前後で、ゆっくり話しても収まります。長く話すほど場が締まるわけではなく、料理が冷めるだけです。

兄弟や祖父母も挨拶するのか

挨拶を述べるのは進行役と親までで、他の家族は家族紹介で名前を呼ばれたときに会釈を返せば足ります。全員が順に話す形にすると、会が長引きます。

結納をしない場合でも挨拶は必要か

必要です。結納の代わりに顔合わせだけを行う形が今は主流で、始まりと結びの挨拶がその区切りを担います。形式ばらない会でも、この二か所は残します。

顔合わせの席で結婚式の相談をしてよいか

歓談の時間であれば構いません。日取りや会場の候補を両家に伝えると、その後の連絡が進めやすくなります。細かい費用の話は、席を改めるほうが落ち着いて話せます。

結婚の挨拶と両家顔合わせのまとめ

結婚の挨拶は親から承諾をもらう場で、両家の顔合わせはその後に家族同士が打ち解ける場です。順番は女性の親への挨拶が先で、双方の合意が取れてから一、二か月以内に顔合わせを開く流れが一般的です。

当日は、始まりの挨拶、家族紹介、婚約記念品のお披露目、乾杯、歓談、結びの挨拶と進みます。挨拶が入るのは始まりと結びの二か所だけで、どちらも1分以内にまとめれば形が整います。

誰が述べるかを前日までに決めておくこと、忌み言葉と重ね言葉を外しておくこと、この二点を押さえるだけで当日の不安はかなり減ります。挨拶は上手さを競う場ではなく、両家が言葉を交わす入口です。

例文はそのまま使って構いません。名前と関係を差し替え、自分の口調に少し寄せておけば、当日は落ち着いて話せます。