大学への願書提出や就職活動、あるいは保護者として学校へ書類を提出する際、封筒に書類だけを入れて送るのはビジネスマナーとして適切ではないかもしれません。このような場面で必要になるのが「送付状（添え状）」です。しかし、いざ学校宛に送付状を書こうとしても、どのような挨拶文の書き出しにすれば良いのか、正しい敬称は何か、と悩む方は少なくないでしょう。特に、大学に書類を送る際の添え状や、提出書類の添え状の例文を探している方もいるかもしれません。丁寧な印象を与え、用件を正確に伝えるためには、書き方のマナーを理解しておくことが大切です。この記事では、様々なシーンで使える学校宛の送付状の例文を紹介するとともに、基本構成から封筒の書き方まで、知っておきたいマナーを網羅的に調査し、解説します。
この記事を読むことで、以下の点が明らかになるでしょう。
・様々な状況に応じた学校宛の送付状の例文が分かります。
・送付状の基本構成やテンプレートとして使える書き方が理解できます。
・大学宛の送付状で使う「貴学」などの敬称の使い分けが明確になります。
・学校に書類を送る際の封筒の選び方や書き方のマナーが把握できます。
学校宛の送付状で使える例文と基本構成
ここでは、学校宛の送付状を作成する上で基本となる構成要素と、様々な場面で応用できる具体的な例文について説明していきます。送付状のテンプレートとなる書き方をはじめ、挨拶文や本文、結びの言葉まで、一つ一つの要素を丁寧に解説します。このセクションを読めば、失礼のない、かつ用件が的確に伝わる学校宛の送付状の例文を理解し、作成できるようになるかもしれません。順に見ていきましょう。
・送付状の基本構成となるテンプレート
・学校で使える挨拶文の正しい書き出し方
・送付状の本文に書くべき内容とポイント
・提出書類の添え状として使える例文
・大学宛の送付状で使う「貴学」について
・結びの言葉と敬語の正しい使い方
送付状の基本構成となるテンプレート
学校宛の送付状を作成する際、まずは基本となる構成、つまり学校の送付状のテンプレートを理解しておくことが重要です。この型を知っておけば、どのような状況でも応用が利き、抜け漏れのない書類を作成できる可能性が高まります。送付状は、一般的に以下の要素で構成されています。まず、用紙の右上に「日付」を記載します。これは投函する日または提出する日を書きましょう。次に、左寄せで「宛名」を記載します。学校名、学部・学科名、担当部署名、そして担当者名を正式名称で書きます。担当者名が不明な場合は「採用ご担当者様」や「〇〇課御中」とします。続いて、宛名の下、右側に「差出人情報」として自分の郵便番号、住所、氏名、連絡先（電話番号やメールアドレス）を明記します。そして、中央に「件名」を「〇〇の送付につきまして」のように分かりやすく記載します。本文は「拝啓」などの頭語で始まり、時候の挨拶、本題、そして「敬具」などの結語で締めくくります。最後に、本文の下に中央揃えで「記」と書き、その下に送付書類の内容と部数を箇条書きで示し、右下に「以上」と記載するのが丁寧な形式です。この基本構成を押さえることが、分かりやすい送付状作成の第一歩となるでしょう。
学校で使える挨拶文の正しい書き出し方
送付状の本文は、「頭語」と「時候の挨拶」から書き始めるのが一般的なマナーです。この書き出し部分が、相手に与える第一印象を左右することもあるため、丁寧な表現を心掛けることが望ましいでしょう。学校の挨拶文の書き出しとして最も一般的に使われる頭語は「拝啓」です。これに対応する結語は「敬具」となり、セットで使うのがルールです。「拝啓」の後には、時候の挨拶を続けます。これは季節に応じた挨拶の言葉ですが、ビジネス文書や公的な書類の場合、季節を問わずに使える「時下（じか）」という言葉を用いるのが便利です。「時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。」や「時下、ますますご発展のこととお慶び申し上げます。」といったフレーズは、学校や企業など、どのような相手にも使える汎用性の高い挨拶文です。特に大学や専門学校などに対しては「貴学におかれましては、ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。」といった表現も丁寧な印象を与えるでしょう。時候の挨拶は、本題に入る前のクッションのような役割を果たします。この一文があるだけで、文書全体がより丁寧で正式なものに見える効果が期待できます。送付状を書く際は、この定型的な挨拶文を覚えておくと、様々な場面で役立つはずです。
送付状の本文に書くべき内容とポイント
挨拶文に続いて、送付状の核となる本文を作成します。ここでのポイントは、用件をいかに簡潔かつ明確に伝えるかという点です。長々と書く必要はなく、誰が、何を、何のために送ったのかが一目で分かるように心掛けることが重要です。本文の書き出しは、「さて、」や「この度は、」といった言葉で始めると、挨拶文から本題へスムーズに移行できます。例えば、就職活動で応募書類を送る場合は、「さて、この度は貴学の求人に応募させていただきたく、下記の通り書類を送付いたしました。」といった形で書き始めます。続けて、「ご多忙の折とは存じますが、ご検討の上、ぜひ一度面接の機会をいただけますと幸いです。」のように、相手への配慮と自分の希望を簡潔に伝えます。証明書の発行を依頼する場合であれば、「さて、標記の件につきまして、下記の証明書発行を申請いたします。つきましては、必要書類を同封いたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。」のように記述します。本文では、送付する書類の内容に直接言及するのではなく、「下記の通り」や「別紙の通り」として、後述する「記書き」へ誘導するのが一般的です。これにより、本文がすっきりと読みやすくなり、送付物の内容もリストで確認しやすくなるというメリットがあります。
提出書類の添え状として使える例文
ここでは、具体的な状況を想定した、提出書類の添え状の例文をいくつか紹介します。これらの例文を参考に、ご自身の状況に合わせて内容を調整してみてください。
【就職活動の応募書類を送る場合】
件名：応募書類の送付につきまして
（頭語・時候の挨拶）
さて、この度は貴学にて募集されております〇〇職の求人を拝見し、応募させていただきたく、下記の書類を送付いたしました。
ご多忙中とは存じますが、ご査収の上、ぜひ面接の機会を賜りますようお願い申し上げます。
（結語）
記
- 履歴書 1通
- 職務経歴書 1通
以上
【証明書の発行を依頼する場合】
件名：証明書発行申請書の送付について
（頭語・時候の挨拶）
さて、下記の証明書発行を申請いたしたく、必要書類一式を送付いたします。
お手数をおかけいたしますが、ご査収の上、発行手続きを進めていただけますようお願い申し上げます。
（結語）
記
- 証明書交付願 1通
- 本人確認書類のコピー 1通
- 返信用封筒（切手貼付済） 1通
- 手数料（定額小為替） 〇〇円分
以上
これらの例文はあくまで一例です。送付する書類の種類や目的に応じて、本文や「記書き」の内容を適切に変更することが大切です。
大学宛の送付状で使う「貴学」について
学校宛の文書を作成する際に間違いやすいのが、相手の学校を指す敬称の使い分けです。特に、大学宛の送付状では「貴学」という言葉を正しく使うことがマナーとして求められます。敬称は、話し言葉と書き言葉で使い分けるのが基本です。「貴学（きがく）」は、書き言葉で大学や短期大学、大学院を指す際に用いる敬称です。送付状や履歴書、エントリーシートなどの文書で相手の大学に言及する際は、この「貴学」を使用するのが適切です。一方で、面接や電話などで相手の大学について話す場合は、話し言葉である「御校（おんこう）」を使用します。この二つを混同しないように注意が必要です。例えば、送付状には「貴学の〇〇という理念に深く共感し〜」と書き、面接では「はい、御校の〇〇という理念に〜」と話すのが正しい使い方となります。ちなみに、小学校、中学校、高等学校、専門学校の場合は、書き言葉では「貴校（きこう）」、話し言葉では「御校（おんこう）」を使うのが一般的です。法人としての学校全体を指す場合は「貴法人」や「貴学園」といった言葉が使われることもあります。このように、相手の種類や状況に応じて敬称を正しく使い分けることは、丁寧な印象を与え、社会人としての常識を示す上で非常に重要だと言えるでしょう。
結びの言葉と敬語の正しい使い方
送付状の本文を書き終えたら、最後は「結びの挨拶」と「結語」で締めくくります。この締めくくりの部分も、相手への敬意を示す重要な要素です。結びの挨拶は、送付の目的や内容に応じて適切な表現を選びましょう。書類の内容を確認してほしい場合は、「ご査収（ごさしゅう）のほど、よろしくお願い申し上げます。」というフレーズが便利です。「査収」とは「よく調べて受け取る」という意味の謙譲語で、書類送付の際によく使われます。面接などを希望する場合は、「ご検討の上、ご連絡いただけますと幸いです。」といった表現が良いでしょう。相手の繁栄を祈る言葉として、「貴学のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。」といった一文を添えるのも、丁寧な印象を与えます。そして、結びの挨拶の後には、必ず「結語」を記載します。本文の書き出しで使った頭語とセットになる言葉を選ぶのがルールです。頭語で「拝啓」を使った場合は、結語は「敬具」となります。用紙の右端に記載するのが一般的です。この「頭語」と「結語」の組み合わせを正しく使うことが、正式な文書作成の基本マナーです。結びの言葉と結語を正しく配置することで、送付状全体が引き締まり、礼儀正しい印象で締めくくることができるのではないでしょうか。
学校宛の送付状で例文以外に注意すべきマナー
ここでは、学校宛の送付状を作成するにあたり、例文を覚えるだけではカバーしきれない、さらに踏み込んだマナーについて説明していきます。大学特有の注意点から、書類を入れる封筒の選び方や書き方、さらには手書きとパソコン作成の判断基準まで、相手に良い印象を与えるための細やかな配慮が求められる点を取り上げます。これらのマナーを実践することで、あなたの丁寧さがより伝わるかもしれません。順に見ていきましょう。
・大学に書類を送る際の添え状の注意点
・学校に書類を送る封筒の正しい選び方
・学校に提出する封筒の書き方とは
・送付状の手書きとパソコン作成の選び方
・書類の正しい向きと封筒への入れ方
・学校宛の送付状で活用できる例文の総括
大学に書類を送る際の添え状の注意点
大学に書類を送る添え状は、高校や小中学校に送る場合とは少し異なる視点が必要になることがあります。特に、就職活動での応募や大学院への出願など、自身のキャリアや学業に直結する重要な場面では、より一層の注意が求められます。まず、宛先の部署名を正確に記載することが極めて重要です。大学は組織が大きく、学部事務室、学生課、キャリアセンター、入試課など、多数の部署が存在します。書類が目的の部署に迅速かつ確実に届くよう、募集要項などをよく確認し、「〇〇大学〇〇学部事務室御中」や「〇〇大学キャリアセンター〇〇様」のように、可能な限り具体的な宛先を明記しましょう。担当者名が分かっている場合は、必ず氏名を記載します。また、本文の内容は、より簡潔かつ要点を押さえたものであることが望ましいと考えられます。大学の担当者は日々多くの書類に目を通している可能性があるため、誰からの、何の書類であるかが一目で分かるように配慮することが、相手への気遣いとなります。前述の通り、大学宛の送付状では敬称として「貴学」を使用することも忘れてはならないマナーです。これらの細かな点に注意を払うことが、あなたの真剣さや丁寧さを伝え、他の応募者との差別化につながる可能性もあるのではないでしょうか。
学校に書類を送る封筒の正しい選び方
送付状や応募書類の内容が完璧であっても、それらを入れる封筒の選び方一つで、相手に与える印象が変わってしまう可能性があります。学校に書類を送る封筒を選ぶ際は、いくつかのポイントを押さえておくことが望ましいでしょう。最も重要なのは、書類を折らずにそのまま入れられるサイズを選ぶことです。履歴書やエントリーシートなどの重要書類は、折り目をつけずに送るのがマナーとされています。一般的にA4サイズの書類を送る場合、「角形A4号（角A4）」または「角形2号（角2）」の封筒が適しています。角形A4号はA4用紙がぴったり収まるサイズで、角形2号はA4サイズのクリアファイルごと余裕をもって入れることができます。複数の書類を送る場合や、返信用封筒を同封する場合は、角形2号を選ぶと安心かもしれません。封筒の色については、茶封筒は事務的な用途で使われることが多いため、白の封筒を選ぶ方がより丁寧でフォーマルな印象を与えるとされています。また、封筒の材質にも注意が必要です。中身が透けて見えてしまわないよう、ある程度の厚みがあるものや、内側に特殊な加工がされているものを選ぶと、個人情報を保護する観点からも望ましいでしょう。たかが封筒と考えず、中身である書類への敬意を示すものとして、慎重に選ぶことをお勧めします。
学校に提出する封筒の書き方とは
学校に提出する封筒の書き方には、定められたマナーがあります。正しく書くことで、相手に礼儀正しい印象を与え、書類を確実に担当者の手元へ届けることができます。まず、表面（宛名面）の書き方です。郵便番号は、枠があればその中に、なければ住所の上に正確に記載します。住所は都道府県から書き始め、ビル名や階数なども省略せずに書きましょう。宛名は封筒の中央に、住所よりも大きな文字で書きます。学校名、学部・学科名、部署名などを書き、最後に担当者名を書きます。担当者名が分かっている場合は「〇〇様」、部署宛ての場合は「〇〇課御中」とします。「御中」と「様」は併用できないため注意が必要です。また、封筒の左下には、送付する書類の内容が分かるように「応募書類在中」や「証明書交付願在中」などと朱書き（赤字で書く）し、定規を使って四角く囲むのが丁寧です。次に、裏面（差出人面）です。封筒の中央線を境に、右側に自分の住所を、左側に氏名を記載します。郵便番号も忘れずに書きましょう。封じ目には「〆」や「封」、「緘」といった封字を書くことで、未開封であることを示すことができます。これらの書き方を守ることが、ビジネスマナーの基本であり、相手への敬意の表れとなるでしょう。
送付状の手書きとパソコン作成の選び方
送付状を作成する際、手書きとパソコンのどちらが良いのか迷うことがあるかもしれません。これには明確な正解はなく、状況や相手に与えたい印象によって使い分けるのが良いでしょう。手書きの最大のメリットは、丁寧さや熱意が伝わりやすい点にあると考えられます。一文字一文字丁寧に書かれた文字は、温かみがあり、パソコンの活字にはない人間味を感じさせる可能性があります。特に、保護者として学校に手紙を出す場合や、お礼状などでは、手書きの方が心がこもっていると受け取られることもあるでしょう。ただし、字に自信がない場合や、読みやすさを損なってしまう可能性がある場合は、無理に手書きにこだわる必要はありません。一方、パソコン作成のメリットは、誰にとっても読みやすく、効率的に作成できる点です。ビジネス文書として見やすく、整然とした印象を与えます。就職活動で多くの企業に応募する場合など、複数の送付状を作成する必要がある際には、パソコンでテンプレートを作成しておくと非常に便利です。学校側から特に指定がない限り、現在ではパソコンでの作成が一般的と言えるかもしれません。どちらの方法を選ぶにせよ、最も重要なのは「読みやすさ」と「丁寧さ」です。手書きの場合は黒のボールペンや万年筆を使い、楷書で丁寧に書くこと、パソコンの場合は標準的な明朝体やゴシック体を選ぶなど、基本的な配慮を忘れないようにしましょう。
書類の正しい向きと封筒への入れ方
丁寧に作成した送付状と応募書類も、封筒への入れ方が雑だと台無しになってしまう可能性があります。細部まで気を配ることで、あなたの丁寧な人柄を伝えることにつながるかもしれません。まず、送付する書類は、郵送中に汚れたり折れたりするのを防ぐため、無色透明のクリアファイルに入れることをお勧めします。クリアファイルに入れることで、受け取った側も書類を管理しやすくなるというメリットもあります。書類を入れる順番も重要です。封筒の宛名面から見て、一番手前に送付状が来るようにし、その次に履歴書、職務経歴書、その他の証明書類といった順番で重ねるのが一般的です。つまり、受け取った相手が封筒を開けたときに、まず送付状が目に入るように配置します。これにより、誰から何の書類が送られてきたのかが一目で分かります。書類の向きは、すべての書類の上下、表裏を揃え、封筒の宛名面と書類の表面が同じ向きになるように入れましょう。書類を三つ折りにする必要がある場合は、まず下から3分の1を折り上げ、次に上から3分の1を折り被せる「三つ折り」が基本です。折りたたんだ際、書き出しの「拝啓」の部分が一番上に来るように折ると、相手が開きやすくなります。これらの細やかな配慮が、相手への敬意を示すことにつながるのではないでしょうか。
学校宛の送付状で活用できる例文の総括
今回は学校宛の送付状で使える例文や書き方のマナーについてお伝えしました。以下に、本記事の内容を要約します。
・送付状は日付、宛名、差出人、件名、本文、記書きで構成される
・学校宛の挨拶文は「拝啓」と時候の挨拶で始めるのが基本
・大学宛の文書では書き言葉の敬称「貴学」を使用する
・面接などの話し言葉では大学の敬称として「御校」を使う
・本文は用件を簡潔に、送付書類は「記」以下に箇条書きする
・結びの挨拶は「ご査収のほど」などを使い「敬具」で締める
・大学宛の添え状は担当部署名を正確に記載することが重要
・書類を送る封筒はA4を折らずに入れられる角形2号が推奨される
・封筒の色はフォーマルな印象の白色が望ましい
・封筒の宛名は部署宛なら「御中」、個人宛なら「様」とする
・封筒表面の左下に「応募書類在中」などと朱書きする
・送付状は手書きでもパソコン作成でも良いが読みやすさが最優先
・書類はクリアファイルに入れ送付状を一番手前にして封入する
・書類の向きは全て揃え封筒の表と書類の表を合わせる
・正しいマナーは相手への敬意を示し丁寧な人柄を伝える
これらのポイントを押さえることで、相手に良い印象を与える送付状を作成できる可能性が高まります。書類を送るという事務的な作業の中にこそ、あなたの誠実さを示すチャンスがあるのかもしれません。本記事が、その一助となれば幸いです。
